photo: 関 康隆 Yasutaka Seki
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鳩間島は西表島の北5.4kmに位置する周囲4キロ弱の小さな島。円形の平坦な島のほぼ中央には標高約34メートルの鳩間中森(鳩間節の歌詞では中岡と表記)と呼ばれる丘陵がある。この島で生まれ現在も多くの人に愛唱されている「鳩間節」は、この鳩間中森から眺めた景観や、稲粟の豊作の喜び、島人の暮しが歌われている美しい歌だ。しかし、この歌には人頭税時代の八重山の庶民の歴史が刻まれている。サンゴ礁の島である鳩間島は、田畑は皆無。そのため鳩間の人々は西表島の荒地を借り開拓、なんとか貢米を納めていた。しかし、豊作を妬んだ地主たちに借地返還の要求を突きつけられる等、確執が生まれ大変苦労した。そこで鳩間の人々は、地主たちに対する敵対心と生産の喜びとを歌い溜飲を下げた。その歌が「鳩間ユンタ」。それを後に役人が改作したのが「鳩間節」である。「鳩間節」には荘厳なメロディーで優雅に踊られる「本節」と軽快な舞踊の「鳩間早節」とがある。「本節」は、鳩間島の祭祀の場で踊られていたが、本島に渡り琉球古典舞踊曲として受容された。一方「鳩間早節」は、大正時代の初期、俳優 伊良波尹吉がアップテンポにし軽快な舞踊曲として華やかなアレンジを加えたことから大衆から愛されることとなった。このように「鳩間節」は、鳩間の人々の苦しみを癒やす歌から、祭祀で踊られる舞踊曲、さらには大衆演芸の場に広がり、沖縄の芸能になくてはならない曲として現在も愛されているのである。
八重山民謡
1)鳩間中岡 走り登り 蒲葵ぬ下に 走り登り
【訳】鳩間島の中岡(中森)に走りのぼり久葉の木の下に走り登り
【囃子】ハイヤヤゥ ティバ カイダギ チトゥユル デンヌ マサティ ミグトゥ
2)かいしゃむいだる 岡ぬ蒲葵 美らさ 連りたる頂ぬ蒲葵
【訳】美しいことよ 盛っている丘の久葉美しいことよ 連なっている頂上の久葉
3)まんが南端見渡しば 浜ぬ見るすや 小浦ぬ浜
【訳】対岸の南端を見渡せば浜が見えるよ小浦の浜
4)小浦ぬ浜から 通人や 蔵ぬ前ぬ 人ぐくる
【訳】小浦の浜を通っている人は蔵元の前の人のようだ