photo: 関 康隆 Yasutaka Seki
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「貫花(ぬちばな)」は、琉球舞踊の雑踊り(庶民の生活を題材にしたカテゴリー)の演目。「武冨節(だきどぅんぶし)」に続き「南嶽節(なんだきぶし)」の2曲で踊られることが多い。元の踊りは、古典舞踊の女踊、「本貫花」(元々はこちらが「貫花」)で「金武節」、「白瀬走川節」の2曲で踊られる。これが、明治以降沖縄芝居などで振り付けアレンジが加えられ雑踊り「貫花小」として親しまれていたが、いつしか「貫花」と呼ばれるようになった。本家の古典舞踊の「貫花」は、雑踊りとは区別する意味で後に「本貫花」と名付けた。
「貫花」とは、赤や白の花糸で貫いたハワイのレイのような鮮やかな装飾物のこと。レイとの違いは、輪っかになっていないところ。これを首にかけて踊ることから「貫花」というタイトルになった。
雑踊り「貫花」の衣装は、琉髪に手巾(ティーサージ)を前結びにし、琉球絣を右肩袖抜きにして中の赤襦袢を見せる着こなしで、農作業をする意味を持つ。その衣装に、鮮やかな貫花を首にかけて踊られる。踊りの前半に当たる「武冨節」は、愛する人を思う女性の恋心を「貫花」に表し、優雅に踊る。そして後半の「南獄節」で、もうひとつの小道具、四つ竹(カスタネットのようなリズム楽器)を両手に持ち、リズミカルに踊るという、メリハリのある演目。
伴奏曲となる「武冨節」と「南嶽節」にも、元歌が存在すると言われている。「武冨節」の元歌は、八重山民謡(竹富島)の「真栄節(まざかいふし)」で、この旋律に歌詞を変えて歌われたとする説が有力。ちなみに「武冨節」の二番の歌詞は、「本貫花」で歌われる「白瀬走川節」を取り入れている。「南嶽節」の元歌は、波照間島の「祖平花節(すぃぴらぱなぶし)」とされている。
「貫花」は、踊りの成り立ちや伴奏曲の変化、タイトルの変遷を辿っても実に沖縄の歌と踊りらしいエピソードに富んだ、沖縄の庶民に親しまれた演目なのだ。
1)でちゃよ押し連れてあたい花むいが 花や露かむてむいやならん
2)白瀬走川に流れゆる桜すくて 思里に貫ちゃいはきら
3)赤糸貫花や里に打ちはきて 白糸貫花やゆいり童
1)打ち鳴らし鳴らし四つ竹は鳴らち 鳴らす四つ竹ぬ音のしゅらさ
2)今日やお行逢拝で いろいろの遊び 明日や面影の 立ちゆとめば